2021.05.26
絶滅寸前の機器を救え!(基板復活再生への道)
★☆★☆★ その後の後編(2021.04.19 → 2021.05.26) ★☆★☆★
実は、ゴールデンウィーク明け早々に、前回(内容は前編にて)のリベンジ作業を行いました。
もちろんご依頼者様も前回はダメ元ではあったけれど再チャレンジしたいとの事で敢行することになりました。
今回は動作している基板(これが唯一の動作基板!)実物をお借りしてパターンを比較しながら、
前回復活しなかった基板と、さらに最近動作が怪しくなっている基板をご準備頂きました。
準備と言っても、この3枚しかありませんとの事でしたので、
失敗すれば装置は息絶え、成功すれば保守用の基板が1枚ストックできるという事になります。
まさに「生か死か」です。
はい、それでは改めて基板を確認してみます。
前回ご依頼頂いた基板は3枚中1番酷い状態の基板でした。
(再生できれば超ラッキーな状態:このブログの下の方にある前編をご覧ください)
それに比べて、今回ご依頼頂いた基板は電解コンデンサの液漏れが始まり、刻一刻と悪化している状態でした。
早急に修繕しなければ手遅れになります。(復活する可能性は高いです)
しかし、残念な事に弊社では動作を確認する術がありません。
基板のみでは何も動作を確認することができないからです。
ご依頼品を返送して、ご依頼者様が装置に組み込んでからでないと、動作するかしないかの判断ができません。
すなわち、一発勝負の世界です。
そして先日、ご依頼者様からご連絡がありました。
これは今回ご依頼頂いた基板の一部アップ写真です ↓ (復活する可能性は高い状態です)
今回ご依頼頂いた基板(2枚目)は安定して動作するようになったとの事でした。(良かったです)
が、さらに!前回ご依頼頂いた基板(下記前編の基板)が動作するようになったとの事。
大変喜んで頂くことができました。
ここにまた、絶滅寸前の機器を救うことができました。
本当に良かったとスタッフ一同喜びに絶えません。
※これが全てのモチベーションになっています。(笑)
★☆★☆★ これ以下は前編の内容です ★☆★☆★
こんにちは。はんだ付け職人の大堀です。
近頃、20~30年くらい前の機器に搭載されていた基板の修繕作業のご依頼が増えています。
組込システムの制御用に開発された回路基板は専用回路なので代用できないからです。
ちょうど、DOSからWIN3.1になり、WIN95(これには驚きました)、WIN98辺りの時期です。
まだまだ専用基板がシステムに組み込まれているのが当たり前の時代です。
(この後のWINXPくらいからパソコンがシステムを制御し始めました)
そして、悲しい事にこれらの基板は保守期間を終えるため、新品基板はほぼ存在せず、
メーカの保守サービスも対象外となります。
メーカとしては新しい装置を購入してほしいから当然ですが、
システムを簡単に入れ替えれる余裕のある工場はそう多くないと思います。
さらに、15~20年が経過すると、ほぼ間違いなく電解コンデンサの寿命が尽きます。
(容量抜け、液漏れなどで本来の性能が発揮されなくなります)
弊社では、古いパソコンのマザーボードに実装されている電解コンデンサの交換を行って、
PCの復活をお手伝いさせて頂いておりますが、今回のご依頼は大変ディープなものです。
パッと見は綺麗に見える基板ですが、よ~く見ると所々黒く汚れた様な所があります。
電解コンデンサの液漏れです。
これは想定内です。試しに電解コンデンサを1個除去します。
さらによく見るとそれらのランドとパターンが腐食により断線していました。
(液漏れが激しい場合、この症状はセットになっています)
ここまでならば作業に問題は無いのですが、なんと周辺(液漏れの被害を受けた所)に実装されている
チップ部品にまで被害が及んでいました。
電解コンデンサと並列に接続されているチップコンデンサはほぼ全滅でした。
チップ部品の端子部は非常にもろいので腐食し始めると触っただけでポロリと取れてしまいます。
作業を始める前にご依頼主様に現状を報告して費用が大きく膨らむことをお伝えしました。
高価になるので今回はお止めになるかと思っていたら、「お願いします」とのお返事。
しかも、復活できる保証が無いことは既にご了承済みです。
バブルの好景気を支えてくれた絶滅寸前の機器を救うためにもやるしかありません。
(その一部始終をこれから投稿して行きます)
★☆★☆★ ロジックICまでもが被害に (2021.04.08) ★☆★☆★
さらに詳しく調べると、ロジックICまで被害を受けていました。
74シリーズの08です。HCですが比較的一般的なICなので少し安心しました。
もしASICやFPGAが被害にあっていたら、、、残念ですが”即終了”です。
今回はセーフな状況でした。
しかし、ICの底にあるパターンが断線しているかも知れませんので一旦ICを剥離します。
大丈夫。しかし底面のパターンに腐食はありませんでしたが周辺のパターンは腐食しています。
このような地味な作業を1個1個続けて調査して行きます。(大変根気のいる作業です)
★☆★☆★ 内層へのパターン修復を終えて終了 (2021.04.09) ★☆★☆★
腐食の被害状況をまとめると、SMD電解コンデンサが二十数個、周辺のチップコンデンサが十数個、
その他周辺ICが数個、そして問題のパターン修復が50か所以上の大手術となりました。
↓これは表面層のパターンを修復した状態です。
中でも特に内層へパターンが潜り込んでいるものがあると大変です。
表面層であれば見たままのパターンですが、
内層に落ちているパターンは見落とすと断線になるので要注意です。
多層基板はビアホールという小さなスルーホールで内層パターンに接続されています。
腐食でパターンが途中で無くなっている場合、
元のパターンの痕跡を顕微鏡で詳細に追いかけて接続先を探すのですが、
ビアホールは小さくて見落としやすいものですのでとても神経が擦り減ります。
この様な小さな作業を重ねて行ってようやく終わりが見え、修復を終了しました。
あとは元の鞘に収まって息を吹き返してくれることを願うばかりです。(これが一番緊張します;汗)
★☆★☆★ その後 (2021.04.19) ★☆★☆★
その後、ご依頼者様から状況のご連絡を頂きました。
結果、動作せずでした。(残念です)
しかし、装置の挙動が異なり「なんだか反応はしているのだけれど所望通りではない」との事でした。
いろいろお話を伺い、対処方法を見出そうとしたのですが話が進むにつれ八方塞がりとなってしまいました。
そこで、今動作している基板(少し怪しい動きをするとのこと)の延命処置をおこなうことになりました。
今回ご依頼の基板とは別の基板です。
装置の代わりがないので(1台しかない!?)今すぐにとは行かないとのことですが、
ご依頼を頂くことになりました。
なんとしても元気にしなければなりません。
はんだ付けに光を・・