2025.10.20
熱に弱い部品の手実装・部品交換について
こんにちは。
はんだ付け職人です。
今日は、最近の微細部品に増えてきている「熱影響に弱い(高温に弱い)」電子部品を
人間がハンダゴテで実装する場合の注意点についてお話します。
最近のスマホや電子機器に搭載されている電子部品は、非常に細かくなっており、
大きさが0402(0.4mm×0.2mm)サイズの部品も珍しくなくなってきました。
こうした微細部品は、全長が50mにもなる自動はんだ付け装置
(はんだペースト印刷→チップマウンター→リフロー炉で構成)
で実装(はんだ付け)することを前提に設計されており、
人間がハンダゴテを使って実装することは、全く想定していません。
むしろ、人間がハンダゴテを使って実装した場合には、「品質を保証しない」と
部品の仕様書には明記されており、
(推奨 温度プロファイルを守って実装したことを証明しないと保証されません)
これを読んだ技術者は、
「あ~この部品はハンダゴテではんだ付けしたらイカンのや~」と
思い込んでしまうこともよくあります。
部品メーカーからすれば、スキルがバラバラの人間の作業者がハンダゴテで実装した
部品を保証していたら補償だらけで大変なことになってしまいますので当然とも言えます。
しかし、量産の段階では自動はんだ付け装置が威力を発揮する微細部品も、
試作・開発の段階では人間がハンダゴテを使ってはんだ付けする必要が出てきます。
この時に困るのが熱に弱い微細な電子部品です。
そもそも人間が実装することを想定していませんので、実装が難しいのはもちろんですが
さらに熱的な破壊を防ぐ手立てが必要です。
と言っても、さほど難しい知識や技術は必要ありません。
例えば0402や0201のセラミックコンデンサを実装する場合を考えてみましょう。
コテ先温度を340℃に設定していたとして、このコテ先をコンデンサの端子に直接当てて
加熱してはんだ付けを試みると、コンデンサの温度は2~3秒でコテ先温度に近い温度まで
上昇してしまい熱破壊を起こすでしょう。
ところが図①のようにコテ先に少量のはんだを付着させて、基板のランド面に置き
ランド面から加熱すると、基板から熱伝導で放熱するため急激な温度上昇は避けられます。

図①
で、上に載ったコンデンサもゆっくり温度上昇していきますので、
頃合いを見て、コテ先を図②のように一瞬だけ触れます。

図②
すると、はんだは一瞬でコンデンサの端子全体に濡れ広がりフィレットを形成します。
ゴッドはんだの職人は、こうして実体顕微鏡ではんだの動きを観察しながら
長年の勘と感覚で適切な温度条件を作り出します。
時には、自動はんだ付け装置のリフロー炉よりも安全なはんだ付けも可能にします。
例を見てみましょう。
自動はんだ付け装置(チップマウンター、リフロー)で実装したLEDが点灯しない?
「自動機で実装した基板のLEDが点灯しない。」
「手はんだでLEDを交換して修正してみたが、やはり点灯しない。」
というお困りの案件でご依頼いただきました。
この時リペアの対象となるLEDは、特に熱に弱く、
実装機のリフロー炉の熱(約250℃)に耐えられず、LEDが点灯しなくなったと考えられます。
ということは、LEDの温度を出来るだけ低い温度(はんだの融点221~240℃)に抑えて
はんだ付けする必要があり、なおかつ、はんだの量にも注意が必要で、
LEDの電極部分の上にまで、はんだを盛ってしまうと、
そこから熱が伝わり、点灯しなくなる恐れがあるという部品でした。
LEDの取り外しは、温度のことはあまり気にしなくてよいので比較的簡単です。
LEDの実装には、5つの注意事項があります。
①熱に非常に弱い為、コテ先はLEDにほとんど触れない。
②LEDを直接加熱するのではなくランド面のはんだを加熱することで接合する
③はんだ量は、電極部の上に、うっすらと濡れ広がる程度の量に抑える。
(チップ内部の半導体に熱を伝えないため)
④しかし、はんだ付けに最適な温度条件は作り出しフィレットを形成する。
⑤LEDの位置決め(仮はんだ付け)も同様に時間をかけてしまうと点灯しなくなる。
はんだ量は多すぎれば点灯しなくなる可能性が高くなり、少なすぎれば、はんだ量過少となり、
はんだ付けの強度不足や発熱の原因になります。
以上の注意点を考慮して、実装したLEDがこちらになります。
※交換後のLED

フラックスを使用しているため、少しLED電極の上に、はんだが流れますが、
薄く濡れ広がっている状態にはんだ量を抑えられています。
この時は、500個程度LEDを交換しましたが、1個も点灯不良は発生しませんでした。
「ハンダゴテによる手実装は動作保証されていないが、正しい基礎知識と技術があれば、
自動実装機よりも安全な実装が可能」
微細部品の実装以外にも、部品に応じて、はんだ量や、熱の伝え方などを
変えていくような作業は、はんだ付け職人の「職人芸」と言えます。
「自分で試作してみたが、どうしてもはんだ付けが上手く行かない」
「試作品を客先に提出したいが、品質と納期が心配」
「基板の改版や部品の改版などで、基板を改造しないといけない。」
「部品の変更で、実装済みの部品を取り外し、再実装しないといけない。」
「量産基板で、間違った部品を実装機に流してしまった。」
こうした案件でお困りの場合、試作・実験として基板1枚からお試ししていただく事が出来ます。
お気軽にご連絡・ご相談ください。
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はんだ付けに光を・・